2023年10月以後:インボイスの要らない仕入経費

2023年10月以後のインボイス制度(適格請求書等保存方式)では、消費税の仕入税額控除を受けるためには原則としてインボイスの保存が必要です。

インボイス制度が始まる前に存在した、「3万円基準」(税込みの支払額が30,000円未満の場合には、請求書等の保存を要せず、帳簿記載のみでよい)は廃止されますので、インボイスの保存に留意する必要があります。

令和5年度税制改正で「少額特例」が創設され、売上高が小規模な会社については、2029年9月までのあいだ、税込10,000円未満の課税仕入れについては、請求書等の保存が不要とされています。

インボイスの保存が不要な取引

インボイス制度以後も一定の支払については、インボイスの受領が難しいことなどから、インボイスの保存が不要で、帳簿への記載だけでよいとされているものがあります。

以下、インボイスの保存が不要とされている取引を見ていきます。

3万円未満の公共交通機関による旅客の運送

電車のきっぷは自動改札で回収されてしまうため、インボイスの保存は不要です。帳簿には「公共交通機関特例 ○○鉄道」などと記載します。鉄道会社の所在地は記載不要です。

鉄道のほか、船舶、モノレール、バスなど旅客運送の公共交通機関が対象です。タクシーや航空は対象外です。

新幹線は販売機でも領収書(インボイス)が交付されるでしょうから、その交付されたインボイスを保存します。

特急料金のほか、グリーン券もこの特例の対象になると考えられますが、入場料金や手回り品料金は対象外とされています。

有料である手回り品料金とは、鉄道会社のホームページによると「小動物の持ち込み」が該当します。

入場券等が使用の際に回収される取引

上記の電車の切符以外でも、やはり使用時に回収されてしまう入場券等があれば、これも帳簿への記載のみでよいとされています。

帳簿には「入場券回収 施設名 所在地」などと記載します。この特例は、所在地(住所)の記載が必要ですが、施設の場所が特定できる程度でよいと思います。

自動販売機、自動サービス機からの商品の購入等(適格請求書の交付義務が免除される3万円未満のもの)

例えば、自動販売機でジュースを買った場合では、インボイスを受け取れませんので、帳簿への記載のみでよいとされています。

帳簿には「自動販売機 ジュース購入 場所」などとを記載します。場所については所在地(住所)の記載が必要なのですが、自動販売機の正確な所在地を書くのは難しいでしょうから、「○○駅」「○○市」などできるだけでよいと思います。

自動販売機の種類ですが、その機械装置だけでサービスが完結するものが対象です。例えばATMは対象ですが、セルフレジや駐車場の券売機は対象外です。

郵便切手を貼って、郵便ポストに投函したもの

郵便切手は購入時のレシートを見ると「非課税」とありますが、購入時に課税仕入れ(仕入税額控除)の対象としてよい、とされています。

また、ポスト投函のときに課税仕入れにする以外にも、実務上は切手の購入時に課税仕入れにしてもかまいません。

切手購入時、または投函時のどちらの処理であっても、帳簿に「郵便特例」「郵便ポスト投函」などと記載します。ポストの所在地は不要です。

なお、郵便局に持ち込んで郵送した場合は、この要件に当てはまりませんので、窓口で交付されたインボイスを保存します。

従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)

日当や出張旅費などを支給している場合、これらは領収書などが存在しない経費になりますので、帳簿への記載のみでよいとされています。

帳簿には「日当 従業員名」「出張旅費 従業員名」などと記載します。従業員の住所は記載不要です。