概要
電子帳簿保存法の改正により、2022年1月から、電子取引で生じた電子データについては、紙に出力しての保存はできないことになりました。
つまり、これまで紙の書類とセットで取引に関するPDFも印刷していた場合、PDFデータについては印刷せず、電子データのままで保存する必要があります。
電子取引とは?
インターネット経由でやりとりした請求書、ネット通販の領収書(PDF、電子メール)などが該当します。
つまり、インターネットで生じた取引に関する電子データであれば、おおむね電子取引に該当すると考えて間違いありません。
どう保存すればいい?
【1】システム上で保存できるもの
システムにおいて検索・ダウンロードできることが要件。検索項目は、「取引年月日・取引先・取引金額」のそれぞれが検索できる必要あり。(組み合わせ検索、範囲検索は不要)
例1:freeeの場合
仕訳に電子ファイルを紐付けることが可能なので、ファイルをアップロードすればよい
例2:マネーフォワードの場合
- MF会計→仕訳にファイルを直接紐付けることができるようになった(2021年12月下旬対応。ファイルは「マネーフォワード クラウドBox」にデータが自動保存される)
- MF経費→取引ごとにPDFファイルなどをアップロードできる(検索は、経理業務「電子取引・スキャナ保存」という項目で可能)
- MF債務支払→取引ごとにPDFファイルなどをアップロードできる(検索は、経理業務「電子帳簿保存法書類」という項目で可能だが、2021年11月時点では旧制度の対応になっている。2022年以降は新制度で対応できると思われる)
- MF請求書→システム内部で検索要件を満たせるほか、下記の「マネーフォワード クラウドBox」にデータが自動保存される
これ以外の電子取引がある場合も、「マネーフォワード クラウドBox」にファイルをアップロードし、検索情報を付与することができる。または、下記【2】の対応でもOK。
【2】特別なシステムを保有していない場合
パソコン上のローカルフォルダにファイルを保存してもOK。ただし、「取引年月日・取引先・取引金額」のそれぞれが検索できる必要あり。
- 電子データを保存しておく。電子メール記載のものは、PDF出力で保存した方が無難
- フォルダ分けは、年月ごとに分けた程度でOK
- 検索要件を満たす(これが一番難しい) しかし、前々年の売上高が1000万円未満の場合は、要件不要
検索要件を満たすためには、次の対応が考えられる。
- ファイル名に直接、検索情報を付与する →例「220131㈱ABC商事110000円.pdf」
- Excelシートで索引簿を作成する
事務処理規程を整備しておく(事前に対処済み)
電子データの保存要件として、事務処理規程の整備が必要です。
当事務所ではすべてのお客様で、関与当初においてこの規程をすでに整備済みです。
留意点
【1】従業員が利用した経費精算の電子データの回収をどうするか?
→紙処理からの移行が大変なため、当面のあいだ、従業員自身が自分で電子データを保管することも認められる。ただしその旨を事務処理規程に盛り込むこと。
【2】スキャナ保存も導入している場合
→電子取引の電子データもタイムスタンプの付与などセットで扱ってよい。
【3】紙と電子データの両方をもらった場合
→紙を優先して保存します。電子データに保存義務はありませんが、保存すべきでしょう
【4】絶対にやらないとダメか?
→法令上では必要です。ただし、保存制度の導入が始まったばかりなので、厳しく見られる可能性はまだ低いと思われます。それでも保存するように取り組んでいる姿勢は当然に必要と考えます。(税務調査もまだまだ紙ベースの概念なので、電子データが基本になるまでは相当の時間がかかるものと思われるため)